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農家の朝

カーテンを開けると外は真っ白い霧に包まれていた、山の上には空に向けて放つ光が放射状に見える。

最近のお気に入りを引き出しから選び水をいれたポットをコンロに置き、
IHのピピッと言う何とも味気ない電子音が鳴らした。

マグカップを持ってテラスに出るがまだ視界は煙に巻かれている。
熱い飲み物が眠気を散らすと同時に山頂の光が丸くなり、一気に太陽であることを主張し始めた。

霜がキラキラと光り、真っ白い世界の解像度が上がる
幻想的な光景が現実的な舞台に代わり
目の前に丹波篠山の田園が登場すると、
初夏を待つイキイキとした若い緑色の世界に変わった。

「苗半生」
もうすぐ最初の重要な時期が始まる。

昨年に取れた種豆は厳選して保存され、
出番まではあと少しだ。

これから始まるステージは入念に手入れをして、柔らかな畝を作る途中の段階
堆肥をたっぷり入れた圃場は心なしか少しだけ赤くなり頼もしく見える。

周りの水田に小さな稲が首まで浸かって並びだすと毎年の事だが気持ちが落ち着かない。

早く準備をしなければという焦りと
まだまだまだ焦ってはいけないと言う気持ちがザワザワ交差する。

今年は遅い時期に種を入れると決めて、
タイミングは数年の経験と実験で出した自分なりの答えを採用する。

短い期間に少しでも多くの経験をするため毎年何種類かの植え方を試してきた。

まともな作物を効率良く仕上げる為の方法は師匠からヒントは得てきたが、
自分が費やせる時間や持っている機械に合わせてアレンジをして一つに絞った。

「おいしい!」とは言われるが腕前だとは思えない。ここの気候のお陰。

毎年1年生、わからない事だらけだ。

スピーカーから流れる音楽に押され
重く立ちあがり草刈り機に手を伸ばす。
刃に触るとまだエッジが利いている
交換はしなくていいみたい。

機械を棚から下ろしてキャップを開け
赤いガソリンタンクのホースを差し込み
青い色のガソリンをコポコポと可愛い音をたてて流し込む
タンクの蓋を漏れないように丁寧に閉めたらプライマリーポンプを数回押して
チョークを上げコードを引く。

先日調整したエンジンがババッ!と咳をした。
チョークを戻してもう一度、エンジンが始動、ご機嫌を伺えば準備完了。

帽子をかぶり大きなヘッドフォンを頭に乗せ、スマホに繋いで音量を上げていく。
ヘッドフォンから音楽が漏れるのに合わせて気持ちも上げる。

いつもと同じ流れで草刈り機をトラックに乗せると
今日も“楽しい作業”に出発
勢い良くクラッチを繋いで圃場に向かう。

今日も草刈り

アホみたいに伸びる草の出鼻を挫くべく繰り返えす“いつもの作業”

「今日の草刈り、予定はどんだけ?」

そこは飽きるまで。

「くぅうーー!」無限!唸るわ。

農園部 古川